ガールズ&パンツァー 劇場版Variante 8巻(完) 感想

「ガールズ&パンツァー劇場版」のコミカライズ、「劇場版Variante」の最終巻となる第8巻が発売となりました。連載当初から素晴らしいアレンジや補完が為されガルパンおじさんを唸らせてきた本作も、遂に完結。遊園地跡でも二転三転する大洗連合と大学選抜との戦いの中、彼女達は何を思い戦車に乗っていたのか・・・?

最後の特典はメロンブックスで購入。ゲームで勝負しているアリクイさんチームのイラストですね。鉾田市とメロンブックス、両方の意味でメロンなのかな。

安斎千代美という少女

37話と38話はボカージュ迷路やジェットコースターでの逃走、最後にセンチュリオンに撃破されるまでを、アンツィオとアンチョビがメインで進行。エキシビションの時はみぽりん達の阿吽の呼吸に入れなかった沙織が、みぽりんから指示の代わりを任され完璧にこなしている姿は1巻でのあんこう無双を読み比べたくなりますね。

大学選抜との試合に前日入りしていたアンツィオ。目的は試合の舞台を下調べすること。タンケッテをてけてけと走らせ、遊園地内も含めて日が暮れるまで情報収集に努めていました。映像だと夜に暗号を受け取っていなかった=既に現地入りしていたという解釈でしょうね。カルパッチョの手元には帰りに寄る予定の和久さんのメニュー表やカエサルのぬいぐるみ、相手戦車の情報などが揃えられていて細かい所まで見所たっぷり。

全域に渡って調べていたおかげで、ジェットコースターの上から索敵することは事前に決定しており、素早く配置に着けていたと。勿論無駄になってしまった情報も沢山あるでしょうが、GPS役として大活躍したアンツィオがもたらす情報もまた、事前に得た情報があったからこそという解釈ですね。

そんなアンツィオの、というよりアンチョビのことを彼女等の活躍と共に語るのが同学年のまほ。生まれた時から戦車道と共にある西住流の娘と、請われてやって来たアンツィオで一時期たった一人で戦車道を回していた安斎千代美。ある意味真逆の2人ですが、それ故に戦車を一輌すら満足に動かせないような時期があっても腐らず頑張り続けてきたアンチョビのことを、まほは非常に高く評価しているみたいですね・・・まほチョビやな?

一人の時間があったからこそ、カルパッチョとペパロニの2人に対しての感謝と思い入れも深く、一方で2人もアンチョビへの尊敬が深く、彼女の教えを受けていっぱしの戦車乗りに・・・1年生達とは違う、この3人だけの先輩と後輩の関係、凄く良いなぁと思います。改めて、ドラマCDの「アンチョビ細腕繁盛記」の続きを聴きたくなりました。

自分達の役目を終えたアンチョビは「戦車道は仲間が必要」だと説きます。最初は1人、1年経っても3人、2年経ってようやく本格的に戦車道を立て直すことが出来た、「戦車は一人では動かせない」ことをアンチョビは誰よりも知っています。そして対戦相手や審判もいなければ、戦車道の試合をすることは出来ません。

アンチョビの言う「戦車道に必要な仲間」とは、戦車道の試合に関わる全ての人達のことを指しているのでしょう。試合が終わればノーサイド、関わった選手やスタッフを労い宴を開くアンツィオの流儀は、この「戦車道の仲間」の大切さをアンチョビが実感したからこそ生まれたのではないかと、そう思えるほどに見事な補完でした。

肩車は如何にして行われたのか

今の自分達に出来ることをしたウサギさんチームや規則を破ったカモさんも含め、センチュリオンに大洗が次々と撃破されて、決戦前の最後の山場であるスリップのシーンへ。一騎打ちに行ったローズヒップはほぼ蚊帳の外、主にカチューシャとエリカにスポットが。そしてエリカと互いに陰険な口喧嘩をするルクリリ。

プラウダの面々に近づいたが故に大変なことになるエミを交えながら、ノンナとクラーラが見守る中でカチューシャは最後まで自分の力を発揮します。

南正門前に配置された時、カチューシャはエリカの胸中を言い当てていましたが、そのもやもやの正体は間近で西住姉妹という余りに大きな背中を見続けてきたことから来るもの。センチュリオンとの合流を阻止するという命令も忘れて、TVアニメの最終局面を思い起こすような、前のめりになってまほを心配するエリカに対して、カチューシャは二重の意味で彼女等を追うなと諭す。

今自分がやるべきことを示され、どこか寂しそうな眼をしながらも、切り替えて乗員達へ向き直るエリカ。ルミ車を撃破した後、モニターが見えないと嘆くカチューシャに、エリカの方から背を向けます。

相手を深く理解し、その力を引き出し導いていくカチューシャ。エリカとカチューシャの肩車に対する伊能先生の解釈は、自分を導いたカチューシャへの敬服としてエリカの方から彼女へ促したもの、としたようですね。

急造チームでのチームワークを煽っていたエリカですが、ルミ車を撃破出来た差は乗員が普段から一緒に乗っている仲間である、という点もチームワークであることをルミに語らせる等、この点でもまたエリカに一つの答えを示すような描き方になっていたと思います。

ある意味最終章3話におけるエリカの変化への兆候、片鱗とも言えるような描写にもなりましたが、皮肉にも自分が力を引き出したエリカにカチューシャは敗れたことになりますね。

ガールズ&パンツァー(少女と戦車)の日々はこれからも続く

中央広場での決戦は、ほんの僅かにまほと愛里寿に独白の追加などがありますが、アニメと同じく台詞は殆ど無し。流れもほぼほぼ忠実です。映像だと分かりにくい、ヴォイテク乱入後に麻子がみほの指示より先に動いているのも前進の指示より前のコマに麻子が描かれている為分かりやすくなっています。

ちなみに映像ではカットされた、観覧車先輩が長い旅の果てにあそこに辿り着いたのがvarianteではしっかりと描かれており、決戦の直前に力尽いたようです。

piec of youthが流れる中で各校の帰路が描かれるED部分の最終話。ここでは各校の一言に加えて、そど子と麻子の会話も追加。

3巻でやさぐれたそど子達を麻子が説得するシーンを始め、2巻と3巻では風紀を守る学校も、守ってくれる人もいなくなる、自分達のやって来たことが無駄になる、何も残らなくなってしまうことへの悲しみや不安、そのせいでカモの3人がやさぐれてしまったことを丁寧に描いていました。試合中、「規則は破るためにある」と悟ったそど子でしたが、Varianteではこの部分も「”ときに”破るためにある」「緊急時だけよ、普段は守るのよ!」と少し変更されたり。

帰路のさんふらわぁの中で、そど子は大洗の生徒が礼儀と行儀の良さを褒められ、彼女達はそれを風紀委員の指導の賜物だと答えているのを知りました。彼女達の努力はしっかりと大洗の生徒達に根付いていることが分かり、そして風紀を守る日々がまた始まることに喜びを隠せないのか早足になるそど子。

「そど子がいないと風紀が乱れるだろ!」という一喝を変更したのは、恐らくこの為でしょうね。劇場版単体だとカモさんチームが風紀委員で無くなりグレた後多少は柔軟になった、で終わりましたが、Varianteではもっと踏み込んで、「大洗女子学園と風紀」それ自体にスポットを当て、この答えを持って来ました。原作では宙ぶらりんになっていた風紀へのそど子の不安をも最後に綺麗に取り除いていくこの丁寧さには脱帽です。

伊能先生、素晴らしいコミカライズをありがとう

学園艦のある大洗へ戻って来たラスト、帰ったら何をするか、テレビアニメ版の最後のように話すあんこうチーム。最後の最後にこのアレンジ、本当に最後の1コマまで満足しかない、非常に良質な劇場版の漫画化でした。

1巻1巻が本当に読み応え凄くて、このブログでは触れられない所も沢山ある程長文で感想を書いてきた(異本)も、今巻で完結。個人的にはリボンの武者を超える程のロスを味わっています。

伊能先生、長期にわたる連載、お疲れ様でした。そして素晴らしいコミカライズを手掛けてくださり、本当にありがとうございました。願わくば、最終章のVarianteは勿論、アンソロ等でまた伊能先生の描くガルパン漫画が読みたいです。

ガールズ&パンツァー 劇場版Variante 8 (MFコミックス フラッパーシリーズ) Kindle版