ガールズ&パンツァー リボンの武者 16巻(終) 感想

さらば、戦車に夢を見出した少女達。

「ガールズ&パンツァー リボンの武者」最終巻となる第16巻が本日4月23日発売となりました。距離的な理由でアニメイトに行きましたが、ジャンプフェスによるお姉さま方の行進は強敵でしたねぇ・・・

今回で大洗女子とタンカスロン連合の試合も遂に決着。大変に満足いたしました。色々と書きたいことは浮かんでくるのですが、とりあえず2つほど要点を絞って感想をしたためてみます。

人を引き付け、次代へ引き継ぐ

リボンの武者の始まりは、西住みほと大洗女子学園による戦車道の常識や伝統を引っくり返す大番狂わせの優勝。彼女の起こした新しい風に魅せられた鈴がしずかと交わり、ムカデさんチームによるタンカスロンへの挑戦が始まった。

最初はアリサと繋がり、大洗で奉納試合をして大洗女子とも繋がり、徐々に表の戦車道女子達とも交わるようになると、今度はタンカスロンに戦車道女子が次々と参入し、やがて表も裏も巻き込んだ一大イベント「闇鍋」へと繋がった。

何かのきっかけで生まれた起爆剤を発端にして、次から次へと人が惹きつけられていく。そしていつの間にか西住みほと大洗女子のように、しずか達自身が新しい風となって、楯無高校に新たな戦車女子を生み出した。振り返ってみると、リボンの武者は最初から最後まで誰かの熱が伝播していく。何かに魂を駆ける少女達の熱が、また新たな少女達を呼び込んでいく。ボコの先に待っていたこの締め方は、予想以上に爽やかなものだった。

一方で、先人達が築いてきた土台があるからこそ、続く者達が現れるということもこの作品では非常に大事にしていると感じた。鬼のおば・・・御姉様方や家元のように、かつて少女であった者達が築き上げてきたものが良い意味でも悪い意味でも表と裏、双方にこの世界では根強く残っている。

また、先輩から後輩へ・・・という、残されていく者達への引継ぎを意識した描写も本作は多い。本編ではまほが一足早く引退してエリカが新隊長になった位だが、本作ではアリサや一年女子がタンカスロンで部隊を指揮したり、この最終巻でも澤ちゃんが2部隊の片方の指揮者となったりと、後輩へ経験を積ませることも重要な要素と位置付けていると思う。

共通しているのは、自分達の代だけでこの熱を終わりにしてはいけないという意志だろうか。戦車道とタンカスロンは今戦っている少女達だけの居場所ではなく、残していった者達へ敬意を払い、そして残る者達を大切にして託していくモノであることが丁寧に描かれている。

風が風を呼び嵐となる、次代へ託されていく。本編では決して出来ない戦いを描き切った全16巻の物語の裏では、この二点を大事にして終始一貫されていたと私は感じました。

これはフラッグ戦也

みほの格を下げず、一方でしずかが負けるにしてもどうやって負けさせるのか?というのはやはり気になるものだったが、上手い落し所だと思った。

最後の作戦、ヤイカはきっちりフラッグ車狙いで考えているのに、みほはしずか達がフラッグ車関係なく自分と戦うと思っていて、あれ?と思っていたが、その予感は的中。試合の前半も含めた、西住みほと戦いたいという15巻分も積み重ねぶつけてきた感情を全て、フラッグ車を落とす為、読者をも騙す勢いで最後の土壇場でみほを謀る為に利用した。

しずかは決してフラッグ戦の本質を見失っていなかった。ヤイカ達も巻き込んで戦いに来た彼女は、西住みほにではなく、大洗女子学園に勝つ為にこの場にいることを決して忘れていなかった。あんこうを制すれば大洗女子学園に勝てるのではなく、大洗女子学園のフラッグ車を倒せば大洗女子学園に勝てることをきっちりと理解していたからこそ、みほと戦わなかった。

個としての戦いから始まったしずかと鈴が、何よりも着けたかったみほとの決着を捨ててまでチームとしての勝ちへ執着した姿にこそ、戦車道の舞台まで上がるに至った彼女達の歩みの全てが詰まっていると思った。

この試合において、みほもしずかもお互いにフラッグ車ではない。お互いに撃破は勝敗には関わらない。最終的にムカデさんはフラッグ車であるアヒルさんまでアウンさんが辿り着く為の捨て石として散り、あんこうもまた履帯が切れてしまいアリクイさんが間に合わなければ負けていた。最後の最後には既にどちらも勝敗に関われる状況では無かった。

漫画版主人公vsみほの結末をどう付けるのか。リボンの武者における回答は、「個人としての決着を着けないこと」だった。タイマンで心行くまで戦ったリトルアーミーⅡとはまた異なるが、ここで彼女達の戦いは終わりではなく、この先がいずれ必ずあることが確信できるのはあちらと同じ。

引き継がれていくものであっても、今この時を駆ける彼女達が今の主役。彼女達こそが誰よりも今、戦車に乗って輝いている。この場を去るその時まで、何度でも戦車で彼女達は語り合い、風を吹かせていくでしょう。

本当に面白い外伝作品でした

タンカスロンという戦車道とは違うフィールドを舞台にして始まったリボンの武者。鶴姫しずかを主人公とした本作は、本編の戦車道では出来ないことを余すことなくやり切り、戦車道について一つの答えを導き出して完結を迎えました。

個人的には本作のらしさがこれでもかと詰まった闇鍋編が最高に楽しかったですが、その勢いを消すことなく最後まで走り切った印象です。野上先生、鈴木先生、長きに渡る連載お疲れ様でした&面白い作品を長きに渡り世に生み出して頂きありがとうございました。

本編には無いカオスさ、熱量。それらがハマる人にとっては最初から最後まで満足出来る作品だと思いますので、興味のある方は今からでも是非読んでみてください。