先日からSTEAMでの配信も始まっていたのすっかり忘れてました。PS4でしか出てなかったソニー製のゲームがPCに来るのは珍しいのではないでしょうか。PS4持ってないけど遊びたいと思っている人には良い機会だと思います。
さて、まだあんまり語ってなかった主人公ディーコンについて語って、ひとまずDAYS GONEの感想は終わりとしますか。
アウトローだけど愛情と優しさを捨てきれない好漢
パンデミックが起きた後のアメリカ、と言う意味ではラスアスと設定が近い所はあるし、崩壊後の世界に順応しているようにも見えるけど、あちらとは違いまだ世界の崩壊から2年しか経っていない。そして単なる普通の父親だったジョエルと違い、ディーコンは従軍経験があり、その中で自分以外は隊が全滅するという凄惨な経験もしている。
そういった事情も相まって、パンデミック前から腕っぷしは強いし、バイカークラブにいたのでバイクの操縦も上手い。作中での強さに主人公補正が無くて説得力がある。ただ、それ故にパンデミック前からアウトローな人物だった為サラとの結婚は事実上の絶縁となったが、お互いにそんなことを承知の上で結婚する程に愛し合っていた。
ディーコンのサラへの愛情の深さは、彼女が亡くなったと思われる難民キャンプに墓標を作り、定期的にお参りすることや、幾度とストーリー中に挟まれる回想、式を挙げた教会を守ろうとしたこと等からも伺える。パンデミックの日に彼女を失って尚、ディーコンの中でサラはとても大きな存在であり続けている。だからこそ、サラが生きているかもしれないなら探し出したいというディーコンの心情に共感出来るし、早く見つけたいという気持ちにもなれる。
サラを見つけた後は彼女を守る為に奔走し、彼女の実験にも理解を示している。感染者を救おうとした彼女を誰よりも優しい人間だと評するが、やっと見つけた大切な奥さんであることを差し置いても、荒廃したこの世界で他者に対して優しい人間だという言葉が出てくるのが素晴らしい。
作中ではリッキーに「心に灯りを灯さなきゃいけない」と言われるけど、実際サラが死んだと確信した後のディーコンはやるべきことを失ってて、ブーザーが傍にいなければ腑抜けてそのまま野垂れ死にしててもおかしくないと思う。もしも当初の予定通り北へ向かったとしても、そう遠くない内に死んでいたんじゃないだろうか。ブーザーが腕を焼かれて動けなくなったのはむしろディーコンにとっては幸運だった。
ブーザーの面倒を見るというやらなければならないことが出来て、NEROとの接触でサラの生存と言う希望が湧いたことで、また心に灯りを灯せた。
一方で野盗に落ちぶれるような人間性ではなく、むしろ彼らやリッパーのような害悪野郎には敵意、というか札意を剥き出しにしている。ここも作中で事あるごとに鬱陶しい野盗やリッパーに対するプレイヤーの気持ちとシンクロするキャラ付け。ただ邪魔だから頃すというわけではなく、略奪や虐札への嫌悪感もはっきり示しているが、生きるに値しないと考える相手に対して基本的に容赦しない所はただの善人じゃなく、荒廃した世界に順応していると言える。
ブーザーの治療の為に奔走しているのを始め、妹に似ているリサを必死で守ろうとし、争いを嫌って他者との繋がりを信じたアイアンマイクの信念に理解を示して命懸けでロストレイクを守ろうとしたりと、荒廃した世界で尚、善悪や絆を捨てず、大切な人や場所を決して見捨てないのも主人公として好感が持てる。なので進めれば進める程、大半の人はディーコンを好きになれるはず。
他方、世界を救うとかパンデミックの謎を解き明かすとか、主人公がヒーローみたいな作品もこの手の設定だと珍しくはないが、あくまで彼は運良くただ生き延びた人間の一人でしかない。最終的にもサラを取り戻してロストレイクに居着く、という彼自身の手が届く範囲での平和と大切な人達を守るに留まっている。
こんな世界になって、いつ感染者の波に呑み込まれて死ぬかも分からないと理解していながら、まだ生きようとあがくのを「もうそれしか出来ない」と彼なりの荒廃した世界への捉え方や生き方もグッとくるものがある。諦観するわけでも、無駄な希望を持つでもなく、生きるしかないから生きる。これ以上なくシンプルで文句のつけようが無い。
荒廃前の世界の価値観、荒廃後の世界の価値観、どちらにも傾き切らずに、自分の大切な人や場所の為に生きるという意志を行動で示す。ポストアポカリプスを舞台としたゲームの主人公として、ディーコンは非常に魅力的なキャラクターとして描かれていると思いました。