Déraciné(デラシネ)をプレイしました その2

さて、デラシネの後半からEDまでの感想ですが、がっつりネタバレになってしまうのでまだ遊んでなくて知りたくない人は今すぐ回れ右をしてください。

外の世界を何も知らない無垢な命

音楽堂で妖精さん=プレイヤーの為に音楽会を開いてくれた子ども達。しかし、この音楽会を開く過程で妖精さんがオルゴールを開ける為に行った手助けにより、彼らは妖精さんの持つ力について一つの知見を得てしまい、それが全てを狂わせて行く。これまでの暖かな世界は、この10月30日をもって終わりを迎える。

それから数日後の夜、彼らは学校を抜け出し、森へと出掛けてしまう。妖精さんはオルゴールの部品を揃える為に、それを呑み込んでいたネズミのヌーを生き返らせたのだが、ニルスがそれを見ていた為に「妖精さんは命をやり取り出来ること」を知ってしまい、彼らにとって大事な人を生き返らせる為に、やり取り出来るだけの大きな命を探す為だった。

学校の敷地内とは全く違う、無機質な地下と、そこから通じる雪山。突然ソウルシリーズやブラボの世界に迷い込んでしまったかのような落差に、先へ進むのが正直怖かった。突然動かない時間の中でも何かに襲われるんじゃないかと思ったくらい。

・・・しかし、そこは彼らが想像していた以上に、いや想像なんて及ばないような地獄だった。外の世界にも妖精がいたが、それは容赦なく見つけた人間の命を奪い去ってしまう悪い妖精。子ども達は勿論、妖精さん=プレイヤー自身も、ここで自分自身が善良な妖精という変わり種のような存在であることを知ることになる。

雪山へ来るまでだけでも怖かったが、そこから雪山に辿り着くまでの中で子ども達が遭難した姿をみるのもかなり辛い。しかもその先で辿り着いた山小屋でも恐怖はまだ終わらない。止まっているはずの時間の中で何故か動き、雪山の中を覗き込んでいる悪い妖精。近づいたら襲われるんじゃないかとビクビクして、同じマスへは移動出来なかった。

そして目の前で起こる惨劇・・・やめてくれ、頼むからやめてくれと思わず願ってしまうが、ただ命が奪われる様を見ることしか出来ない、本作で一番ショッキングなシーン。本当に、あの暖かい学校での日々からのあまりの落差に絶句するしかなかったです・・・

今を変える為に過去へ飛ぶ、その果てには

そこから時間が経ち(実は数日後に見えて1年経ってる?)、一人学校へ逃げ延びてきたルーリンツは、髭も剃らずにやつれ憔悴した様子。学校の書物等を読み漁り、妖精の力について調べ上げた彼は、自らの命を使って過去へ飛び、自分達が森へ行かないように過去を変えてほしいと妖精さんに懇願します。

・・・もうね、やめてくれと。どうしてルーリンツの命を、自分の手で奪わなきゃいけないんだと。モーコン専用のVRだから、操作的な意味でも文字通り自分の手で彼の命を奪うんですよ。しかもそのままルーリンツは目の前で干からびていくんです。悪い妖精がマリー達の命を奪ったのを目にした後、自分も同じように子ども達の命を奪い、良い悪い関係なく自分は妖精であるという事実を突きつけてきます。

おまけにその命で過去へ飛ぶ時、ありがとうなんて最期の言葉まで聞こえてくる。あの惨劇で心を抉られたプレイヤーへ、更なる追い打ちを二重三重に掛けてくる。悪魔かフロムは!

ここからはルーリンツの願いを叶える為、彼の命に報いる為、森へ行く要因となる事象を過去で変える必要があります。完全に次の章まで進む為には改変するべき事項が複数あり、それを全部こなさずに現代へ戻ってもまた過去へ戻らないといけません。その度に上述したルーリンツの命を奪って過去へ飛ぶという手順を踏む必要があります。何度もループにハマりたくない!ってここまで思えるようなアドベンチャーゲームも中々無いと思います。

過去を変える度、今の状況も少しずつ変わっていくのですが、同時に学校の外がフロム過ぎる世界観であることも判明していくことになります。というか、この世界ほぼ詰んでるのでは?

結局、変えられるだけの過去を変えた上で、生き残った子ども達は調べられる範囲の書物、思いだせる限りの記憶を総動員した上で、学校の外へ出るそもそもの理由を変えるという事になります。そう、つまり森へ行く前にユーリヤが生き返っていれば行く意味が無くなるじゃん!というわけです。

森へ行った時間から医務室へ入れるようになるのですが、実はユーリヤはとっくに氏んでおり、ミイラのようになった今もその亡骸は医務室に安置されています。薄々分かってはいたのですが、最初見た時はショックでしたね。生き返らせる為に必要なあるものも、実は序盤から微妙に視界に映る範囲で示されていたりと、これ等の伏線は結構丁寧に張られています。

・・・しかし、これでめでたしめでたしとならないのもお約束。ユーリヤが生き返って、ハッピーエンドのEDに見える雰囲気かと思いきや・・・この後に目に飛び込んできたものと、それに合わせてBGMが止まる演出も相まって、背筋が凍り付きました。VRだから、実際に学校にいる目線で医務室を出て、廊下を走って。その過程で幸せそうな記憶を見て、階段を降りて、これですからね・・・本当に、この演出はヤバい。誰も悪意が無いから余計に辛い。

最終的に、プレイヤー=妖精さんは自分が生まれた最初の時間、つまりチュートリアルに戻ってきます。最後にチュートリアルをまたやるという変則的な構成。違うのは、妖精さんが持つ赤い指輪へ命を吹き込む為に掴んだ金枝を”誰が”持っていたのかが分かるようになっていること。

最初のチュートリアルの時点で、指輪を持たない妖精さんがどうなるかは周囲を調べると読むことが出来ますが、だとしても、子ども達の惨劇の全ての発端がどこにあったのか、それを分かった上でまた同じ時間を繰り返す為に指輪を自分の指にはめるのか、覚悟のうえで命を返すのか・・・それを受け入れる行動が出来るかもまた、プレイヤーの手に委ねられています。

受け入れることが出来た時、この物語はEDへ辿り着けますが、その結末は大体予想の通り。外の世界がヤバいのも、彼らが純粋なままなのも何も変わりません。それでも、妖精さんがここに産まれた意味は確かにあった。切なく、物悲しく、そして美しい終わり方でした。

VRだからこその体験、それによって生まれる没入感、二面性を持つ雰囲気とストーリー、フロムらしい大量のテキストで示唆される世界観や背景の謎…ボリュームそのものは決して長くはありませんが、VRを楽しめるアドベンチャーゲームとして、紛れもなくおすすめできる一本です。

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