「ガールズ&パンツァー リボンの武者」の15巻が11月21日に発売されました。15巻まで続いてきた本作も、いよいよ最後?の戦い。タンカスロン連合が、大洗女子との戦車道での練習試合に挑みます。
タンカスロン女子達最大の闘い
ページをめくるといきなり出てくるのは綺麗な隊列で前進する大洗女子の車輌、そしてそれを偵察するしずかと鈴。ここに来ていきなりアニメ1話冒頭のオマージュで15巻は始まります。
リボンの武者では3巻以来の、12巻ぶりに戻ってきた大洗町でやる試合とは言え、今度は偵察される側が大洗女子というのが何とも面白いですね。みほが「戦術と腕」なのに対し、しずかが「計略と度胸」と答えるのも2人の違いが出ていて面白い所。また、アニメ1話の流れをやるというのが、ある意味「ここからはアニメのガールズ&パンツァーと同じく、【戦車道】で戦います」と宣言しているようにも取れますね。
ぶっちゃけ勝負になるのかすら不安になるような車輌性能の差で始まったこの練習試合、何と一番最初に撃破されたのはまさかのポルシェティーガー。あの戦車群でどうやって?という謎の答えこそ、前巻ラストで示されていた秘策、成形炸薬弾の使用。射程の制限等はありますが、条件を満たしてしまえば37mm砲であろうと180mmの装甲を貫通してしまえるという事実を戦車道の世界にぶち込んできました。
最終章2話に飽き足らず、こちらでも真っ先に退場させられてしまうとは・・・メタな話、火力も装甲も知波単やタンカスロン連合相手には過剰過ぎるから、いなくならないと話にならないというのは分かる、わかりますが・・・可哀想なポルシェティーガー。
が、その退場の理由が前巻ラストの秘策、そしてこの15巻で投げかけたいテーマそのものに関わっている為、必要な犠牲ではあった。何より、ポルシェティーガーという重戦車をあの戦車群で撃破するという下克上、展開として盛り上がらないわけがありません。
自由に戦車を駆る乙女達
大鍋の中でバトルロイヤルに加えてタンカスロンにしか使えない魔改造戦車まで出してきて、遂には戦車道の土俵の上でもルールに抵触しない範囲で戦車道の常識をぶち壊してきました。禁止と明文化されていないことは何をやっても良いネガティブリストと、それ以外は全て禁止のポジティブリスト。スポーツのルール等でも使われるこの違い、戦車道もまたネガティブリストのはずが、いつの間にかポジティブリストが適用されているかのような閉塞感に包まれていた、と。
聖グロがOGのせいで戦車を変えられなかったりするのがポジティブリストとするなら、アリサの使った盗聴バルーンはネガティブリスト。そして奇想天外な大洗の戦い方こそ、ネガティブリストの体現。
最初からこの流れを狙って描いていたのかは分かりませんが、もし狙って描いていたのならアリサを1巻から登場させたのって凄い。ケイのフェアプレイの精神にこそ反するものの、元から盗聴バルーンというネガティブリストで考えた行動を大洗以外で行っていた数少ない人物でもあるわけで。元からタンカスロン向きの性格であると同時に、閉塞した戦車道の状況を変えるには彼女のような考えが必要だと今巻で示されたことで、あらゆる意味でしずか達に頭から関わる人物としてふさわしい存在であったんだなぁと思います。
そういう意味ではアンツィオも、戦車がタンカスロン向きなこと以上に、マカロニ作戦を元々盛り込んでいる辺りも近い発想で戦車道をやっている学校ですね。逆に戦車自体が強いからそんなものが必要ないプラウダや黒森峰はそこから遠い場所にいるけど、エリカや小梅、ニーナやアリーナがタンカスロンに関わることで、作中では変わりつつある空気に取り残されずに済んでいる。そしてダー様はそこで暗躍し続け、自由を求めた。
20年ぶりに復帰したばかりの弱小校が優勝した影響は、そうしたポジティブリストが蔓延した空気に風穴を開け、そしてポジティブリストの蔓延に比例するかのように大きくなっていったタンカスロンではネガティブリスト=自由な戦車戦の姿を多くの人達が求め続けてきた。
タンカスロン連合vs大洗女子とは即ち、戦車に乗ることにおいてネガティブリストで考える者達同士の、誰よりも自由で柔軟な発想で戦車を駆る戦い。だからこそガチガチのポジティブリスト思考のOGの婆さん達は我慢ならず、タンカスロンの土俵に行き場を求めた鬼の婆さん達は楽しくて仕方がないのだ。
自由な戦車道はまだまだ続く
タンカスロン連合が初手でフラッグ車のアウンさんも含めた全員でポルシェティーガーを落としに掛かれば、それに応えるかのように大洗もフラッグ車のはっきゅん自ら吶喊して油断を作り、しずかの策を失敗させる。
ルノーB1が盾になる為に前に出れば、それを待っていたかのようにアウンさんが成形炸薬弾を発射してルノーB1を撃破。大洗側が先に重戦車が2輌とも脱落するという大波乱を見せつつ、最後は次に何をしてくるのかワクワクしながら、圧倒的な強者感が醸し出されるあんこうチームで〆。
読者も含めて大洗の圧勝かとも予想された試合は、一進一退の攻防を繰り広げながら16巻へと続きます。