ガールズ&パンツァー リボンの武者 11巻 感想

×戦車乙女 〇いくさ乙女

「ガールズ&パンツァー リボンの武者」の11巻が発売。2回戦に入り、5つ巴の大乱戦に魔改造戦車に乗り込んだ圧倒的ラスボス感を漂わせる鬼ババア達も乱入。ムカデさんとヤイカが果敢に彼女達に戦いを挑んだところで前回は終わっていました。

勝ち負けなんてどうでもいい「いくさ狂い」

前巻の終わり際や今回の冒頭でも分かる通り、鬼達という圧倒的なツワモノを前にして、先に反応して昂ぶりが抑えられなかったのは鈴の方でした。

お馴染みの「私の〇〇の話をしようーー」が、今回は【「私の」”渇き”の話をしようーー】でしたから、鈴もまたツワモノとの戦いを望み続けていて、これまでのタンカスロンの試合でも本当は満たされていなかったのでしょう。これまでは戦狂いな面はしずか姫ばかりが目立っていましたが、彼女の馬である鈴もまた、いやもしかしたら鈴の方がしずか以上に戦狂いだったのかも。

そして今回、最初に鬼へ向かっていったムカデさんとヤイカに中てられて最初にローズヒップが加わり、更に各チームからも分隊を編成して対鬼チームが結成され、大集団による鬼退治が始まりました。この展開、10巻の終わり際ではまだ深く読み取っていなかったのですが、この11巻の序盤の鬼チーム結成までの流れを見てハッとしました。

鬼である3人のババア達は表の戦車道からは姿を消し、30年も掛けてタンカスロンに解答を見出した人々。ヤイカは戦車道ではなくタンカスロンにこそ自分の戦う場を見出した者。そしてムカデさんチームはタンカスロンしか知らない者達。全員に共通しているのは、戦車道が自分の戦車乗りとしての基準になっていないこと。大事なのは勝ち負けじゃなくて、ただただ、今目の前にいる強い相手と戦いたいだけの連中。

だからこそ戦車道=試合は勝敗が大事、ということが大前提になっている本編のキャラ達からすれば、やる必要のない鬼との戦いに自ら赴くのは到底理解のできない行為でしかありません。だからオレンジペコは彼女達の行動が理解出来ない。戦車道をやっている立場だけど一番ムカデさんとの付き合いが長いアリサは理解は出来なくても想像が出来た。アスパラガスはムカデさんとヤイカのことを深く理解出来ているという、それぞれの立場故に異なった反応をしているのが面白い構図だと思いました。

が、そんな彼女達に中てられて、まずはローズヒップが乱入する。更には各チームから集まった分隊も合流する。その目はいくさ狂いの連中と同じ、ただただ戦いたいだけのギラギラしたもの。これまでの本編キャラ達はただタンカスロンという場で戦っていただけに過ぎず、今になってようやくタンカスロンという土俵がどういう場所なのかを理解し、そこに足を踏み込んだのだと感じました。

破壊と再生の物語・・・みたいな?

本作におけるダー様は、今の戦車道の在り方に危機感を抱き、それを打開する為にタンカスロンに大々的に乗り込み、それを利用しようとしています。

・・・が、リボンの武者においては彼女がやっていることは戦車道という武道が作中の今に至るまでの過程を追体験しているものである、ということがこの11巻で語られました。

ガルパンの本編の時間軸における戦車道は、競技としての進化の過程で様々なルールや在り方が模索され生まれては消え、そうした中で生き残ったものが今に至る。が、それは戦車の強い強豪校だけに人権があるようなものになってしまい、袋小路に行き詰った状態に陥っている。

しかしそもそも本作のダー様は、みほとの出会いによって戦車に乗る楽しさ、楽しい戦車道に自分の戦車道を見出した、と。だから7巻の冒頭で「戦車に乗る楽しさを知って欲しい、それが第一歩」とまほに語っていたんですね。だからこそ彼女は大鍋という盛大なイベントを開いた、と。戦車に乗る楽しさ、それを知ってもらうことで今の日本の戦車道の状況を変えたい、変えられるんじゃないかと。

要するに、戦車道とは違う何でもありの戦という面ばかり注目されていたリボンの武者という物語で、「戦車に乗るのは楽しい」という所が何よりも重要だということにダージリンは辿り着いた。ムカデさんチームもまたダージリンと同じ不満を持ち、そして戦車に乗るのは楽しいからだという結論に同じく達していた。だからこそ彼女達が辿り着く前から楽しい戦車道をして勝っていたみほが、今こそムカデさんチームの相手となるのは自然の流れと言うか、リボンの武者は楽しい戦車道で勝つみほがラスボスとなるにふさわしい展開を最初から目指していたんじゃないかと、そんな風に感じますね。

展開だけを上げると大鍋は途中で中止して最後にみほが出てきただけ、となりますが、この大鍋はみほがラスボスとなる為に必要な最後のピースであり、そしてそのピースを埋めたのであれば大鍋の決着自体に意味は無いものである、と私は結論付けました。ですので、この展開には大いに納得しています。

そもそも、しずかは決勝戦が「戦えないから」悲しんでいたのだし、何より鬼との戦いを経た後の乙女達にとって、大事なのは勝敗を付けることじゃなく、戦うことそれ自体だったはず。だからこそ、読み手には不満な展開ですが、作中では大事なものじゃない、と私は思います。

いよいよリボンの武者も終結か

満を持して、あらためてムカデさんの前に現れたみほとあんこうチームの面々。しずかと鈴が戦車に乗る意味を確かめる為の相手は彼女を置いて他にありません。そしてこの戦いを以って終わりとするならば、ムカデvsみほがリボンの武者における最後の試合となるでしょう。

あと1巻か、もしくは2巻か。どちらにしろ、長きに渡り続いたこのリボンの武者も、そう遠くないフィナーレを迎えることになりそうですね。