恨み来、恋、恨み恋。 9巻 感想

恨みと恋と、恨みと恨み。

「恨み来、恋、恨み恋」の9巻が発売となりました。今回は頼れる先輩こと午坂遥菜の表紙が目印。勿論とらのあなで購入しました。とら特典の描き下ろし漫画では、閃と午坂先輩が初めて会った時のお話が載っています。

恨みと怒りに板ばさみ

夏歩と朱華、二人に告白され、好意を向けられていることを自覚した恭一。二人の気持ちに対してどうしたら良いか分からなくなり、兄貴分の亥山に相談することに。

一方で恋敵であるはずの夏歩と朱華の方は、例えどちらかが失恋してもきっと今の関係が壊れることは無いだろうと、妙に落ち着いた雰囲気。

当初は夏歩が恨みか恋か分からない自分の気持ちに悩み、朱華も踏み出せないまま悩んでいましたが、そんな彼女達はお互いを深く理解し、どちらが失恋しても恨みっこなしだと一定の結論を出しましたが、今度は恭一の方が悩む立場に。

恭一がどちらを選ぼうとも、彼らはこれからも一緒にいそうだというのはよく分かる。3人は3人とも、良い所も悪い所もよーく知ってるわけだし、例えどちらが恭一と付き合おうとも、騒がしくも楽しい毎日が変わることは無さそう。それだけに、恭一は悩んで悩んで、ちゃんと結論を出せるのか。

頼られたい人と従う人

子国家の力が大き過ぎると、午坂先輩は子国家に当主の座を引いてもらうことを主張。十二家の昔からの取り決めとして、両家の代表として遥菜と代理の閃が戦うことに。閃は強制遂行もあって自身への負荷も顧みず戦おうとしましたが、最終的に宮湖が当主であることより閃を選んだ為、大事には至らずに済んだ様子。

実際の所、遥菜は権力が欲しいわけではなく、鬼騒動の頃から宮湖を心配しており、彼女を子国家当主の重圧から解放する為に当主から降りてもらおうとしたようで。恭一も含め、皆がしっかりしている、大丈夫だと思っており、閃さんも立場故に口出しは出来ず。

そんな中、遥菜だけが一人の小学生としての宮湖を見ていたのですね。頼られるだけでなく、相手のことをよく見ている先輩です。今回、恭一に迫られて抑え込んでいた本音を吐露しましたが、当主として自分の感情を押し殺してきた宮湖の姿は、あまりにも痛々しかった。

当主の座を譲り受け、再び当主となった恭一。強制遂行は使えない、妖怪となっている等、読切版とはまた違いますが、ようやく子国家当主にふさわしい少年へと成長したようですね。夏歩の成長に目が行きがちですが、恭一も1話の頃から随分頼もしくなりました。

しかし作中でも何度も触れられていますが、本作は信仰や伝承、要するに「信心」こそが力の根源となっています。当主の座から降りたことは、子国家と十二家への失望、不安といった感情に繋がり、恭一は当主にこそ戻りましたが、強制遂行の力は失いました。強制遂行が使えなくなったことで、現在掛かっている強制遂行の効力も消えるという展開もあり得そう。そうなると8巻で少し触れられていた、卯ノ崖の復讐が本当にあるかもしれません。

・・・まぁ、当主から降りて、宮湖がただのお兄ちゃん大好きな小学生に戻ったから本人達的にはこれで良いんじゃないかな。もう宮湖が戦うことは無いでしょうし。

恨みはいつまでも恨みとなる

これまで透也をそそのかしたり、朱華や虎虎を妖怪にしたりと暗躍し、更には十二町の中心に存在する土地神様すら葬ってしまった、白い布を被った謎の黒幕。

郷一への恨みを匂わす、夏歩が不思議と恐怖を感じなかった、全が結界の秘密を含め何か重大なことを知っている、朱華の鬼化騒動で遭遇して顔を見た時の夏歩の様子等、これまでの伏線の数々から正体は夏歩の知っている人、恐らくは夏歩の母や祖母である先代恨み猫という可能性が濃厚でしたが、本当にその通りでしたね。今更ながら、このタイトルも逸脱だと思います。来と恋、どちらも同じ読み方が出来る一文字。最終回とかは「恨み恋、恋、恨み恋。」とかになるかもですね。

ここまでに恭一・朱華・虎虎が妖怪となった上に、子国家が当主の座を降りて長年保たれてきた十二家の信仰とバランスはバラバラ。更に土地神様も始末され、恭一達がまだ知らない所で十二町そのものの存続の危機と言う大事になってきました。

9巻収録分の内容になりますが、彼女の名は「猫ヶ崎冬歩」。まだ少年だった頃に郷一と全が出会った、先々代であろう恨み猫です。恨み猫は追放された猫の伝承から強大な妖怪へと至った者。他の強大な力を持つ妖怪が黒幕という可能性もありましたが、実際には凄くシンプル。恨みが力となり、恨みが原動力となり、これほどの凶行に及んでいたのです。

冬歩の暗躍の理由は、郷一が当主として選んだ十二町そのものへの恨み。冬歩からしたら十二町は、自分から郷一を奪っていった許せない女ってわけですか。最近忘れかけていましたが、恨みとはかくも恐ろしいものであると思い出しますね。恨みが恋へ変わった夏歩に対し、今の冬歩にあるのは恨みだけ。町を滅ぼすまで、彼女の恨みが消えることは無いのでしょう。

いよいよ姿を現した黒幕、もう一人の恨み猫。妖怪騒動もいよいよ大詰めを迎えようとする中、恨みと恋はどのような結末を見せるのか。

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