ボンバーマンジェッターズ 45話 感想

ジェッターズでも1,2を争う神回、45話。これまでの積み重ねがあるからこそ、この回は重い。

第45話 ゼロとシロボン

31話と同じく吉田玲子さん脚本の、終盤の神回。サブタイトルでもアイキャッチの前半でも、BGMが流れない異質な回。ある意味、雰囲気は1話に近い。と言うより、1話で止まっているマイティのシロボンの記憶に、それからの2~44話まで積み重ねた変化・成長を見せつけられる回なので、1話の対となる話でもある。シロボン視点でのマイティの最後の思い出を描いていたのが1話なら、マイティ視点でシロボンと1話のその後を描いているのが45話とも言える。

ボン婆さんはマイティだと思っていたが、ゼロの正体はアンドロイド。つまり・・・ボン婆さんはゼロが生きていたマイティだという一縷の望みを掛けていたのだろう。それが絶たれたからこそ、あれほど泣き、取り乱した。遺体の帰ってこなかった遺族が、突然生きていたと思しきその人が帰って来たら・・・一体、どんな胸中なのだろうか。それでも、ゼロに対してお前も辛いだろうとその複雑な胸中を察した言葉をかけられる優しさは、流石歴戦のボンバーマンというか、シロボン達の祖母らしい所だ。

「もうお前の知ってるシロボンじゃない」「悲しいことなのか嬉しいことなのか分からないけど、人は変わっていく」「じいさんがいなくなっても平気なわしのように」と、シロボンについては浦島太郎状態のゼロに語るボン婆さん。OPの歌詞をここに台詞として持ってくる構成が上手い。歳が歳だけに、多くの人達と死に別れ、それにも慣れて生きてきたボン婆さんだからこそ、その言葉は深いしとても重い。

ボン婆さんも嘘が下手なら、孫のマイティも嘘が下手。よくこれであの言葉を言うまで、シロボンを誤魔化せたものである。ただ、ボムスターをいくつ持ってるかと聞かれて、「僕も6個だ」と答えた時は迷いが無かった。マイティの記憶を持っているからだが、それって・・・

この回のゼロは完全にマイティとしてシロボンに接していて、そしてマイティだと気づかずにマイティのことをゼロに話しているシロボンの姿は、本来の兄弟の仲睦まじさを見ているようで尊いが、同時に、もう二度とこんな時は戻って来ないという事実に辛くなる。マイティの知らなかったこと、気づいていなかったことをシロボンに暴露されて焦るゼロだが、逆に良い所を聞くと、ありすぎて分からないと涙ぐむ。

兄弟や家族って、そういうものですよね。嫌いな所や面倒臭い所を知ってるけど、でもそれ以上に良い所や好きな所を沢山知ってる。だから大好きなんだ。

それだけに、ゼロからしたらこれは生き地獄でもある。マイティの記憶を持つが故にシロボンの成長を目にすることが出来たが、マイティの記憶を持つが故に、ボン婆さんがあれほど取り乱す位、大切な孫を奪ってしまった。仇を討たなきゃと必死になる位に変わってしまった、お兄ちゃんを大好きなシロボンからお兄ちゃんを奪ってしまった。その事実を見せつけられているわけだから。

そして死者の目線で見た、自分のいなくなった後の世界とは、どんな風に映るのだろうか。死んでしまったマイティの時間はそこで止まったが、生きている人達の時間は止まらない。マイティが行方不明になってもジェッターズとヒゲヒゲ団の戦いは終わらなかった。シロボンが成長したことで宇宙に一つしかないものも守れていたし、「マイティがいなくなっても平気なように」、その後の世界は動き続けてる。

現実でも、自分がいなくなったらこの会社は・・・という状態な所やそう思い込む社員というのは多いけど、実際にはそうじゃなくて、その人がいなくなっても大体は何とかなってしまって、いずれは最初からそんな人はいなかったかのように落ち着く。ジェッターズが嫌にリアルなのは、そういった所まで丁寧に描いていること。

自分がいなくても何の問題もないかのように見える世界は、自分がいないことだけは変わったけど、それ以外はまるで何も変わってはいないのだろう。「伝説のボンバーマン」とまで呼ばれたマイティがいなくなっても世界には支障を来さないのは、とても残酷な現実である。

どこまでもマイティとして接したが為に、シロボンにはマイティだと確信されてしまったゼロ。そう、その言葉は。「大丈夫」という言葉だけは、絶対にマイティだとバレてしまう。それでも、マイティとして言わざるを得なかった。大好きな弟が、自分のせいで死んだと思っていたと、敵討ちをしようとしているなんて言われたら。

そして、なにが「大丈夫」なのか。マイティを殺したのはゼロ。そのせいでメカードの研究は進み、MAXが生まれた。なら、その意味はきっと・・・

それと、ゼロが郵便で何かを投函していたことを覚えておいてください。

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