ガルパンの漫画解説その2では、最古参の連載作家である才谷屋龍一先生の作品を紹介。
ガールズ&パンツァー(才谷屋版)
アニメ放送開始前に連載が始まった、アニメ本編のコミカライズ作品。この漫画版とリトルアーミーが、最も古い漫画作品となります。
基本的な進行はアニメに沿いますが、大きな特徴として主人公が秋山殿になり、彼女の視点から描かれています。その為、進行に応じて優花里視点から各戦車の説明が入るので、戦車の性能が把握しやすくなっているのがポイント。
更に2戦目のアンツィオ戦については当時まだOVAも完成していなかった為、優花里が車長となってルノーB1を投入する等の独自の試合展開で進行。アンチョビもOVAと異なる性格をしておりこの作品で最もアニメと違う部分です。
そしてここで出たカルパッチョは後にOVAでも主要人物の一人になっており、現状では漫画のオリキャラから正式に昇格した唯一のキャラとなっています。
他にもリトルアーミーの菊代さんが少し出てくるのを始め、アニメと違う部分がそこそこあるのも見所の一つ。アニメに近いけど独自色も十分あり、これ単体でも完成した作品と言えます。
難点としては、当時の先生の画力がお世辞にも高いとは言えないこと。ここが人を選ぶ点だとは思います。
激闘!マジノ戦ですっ!!
戦車道大会が始まる前に、大洗女子が聖グロ以外の学校とも練習試合を行っていた、という内容。アニメやOVAにも名前と設定があるマジノ女学院がその相手。
大洗では唯一の経験者であるみほを中心に各員が錬度の上昇を図る中、マジノでは新隊長のエクレールが戦術を変化させようと苦心中。そんなタイミング故、練習試合は両校にとって絶好の機会。
聖グロ戦の後という時期なので、Ⅳ号はD型仕様のまま、38tも38tで、ルノー・P虎・チヌは勿論出番無し。まだ序盤なのでみほの性格も少しおどおどした状態ですね。
大会までの間を埋める物語として中々面白い作品なのですが、マジノの戦術が機動戦に転換中で月刊戦車道の内容と異なっている他、河嶋桃が初撃破を上げていたりと、やはりアニメとはパラレルの作品です。
フェイズエリカ
コミックウォーカーで連載中。
逸見エリカが主人公に抜擢され、彼女が黒森峰女学園の中等部に入学した所から始まる作品。
まほに憧れ入学した黒森峰女学園。しかし同学年には、入っていきなり副隊長に抜擢されたみほがいて・・・という、予想通り西住姉妹との関係に重きが置かれた作品。
2巻からは高校編に入り、継続高校との練習試合の模様が描かれていますが、全3巻のうち半分以上は継続との試合内容で、肝心の中学生時代のみほが隊長でエリカが副隊長の時期、例の事件が起きるまでの過程などは殆ど描かれておらず、題材に対して読者が求めていたものとの大きなズレがある点に注意。
また、先生はこれを「アニメに繋がる物語」と発言していますが、どう捉えるかは読んだあなた次第だと思います。個人的には、これはアニメには繋がらないと思っていますが。
総評
この中で一本を人に薦めるなら、2作目のマジノ戦をおすすめします。マジノのキャラに十分な魅力があり、試合もほぼ1巻使っているので全2巻ながら読み応えのある作品です。
なお、才谷屋先生はアンソロも含め、特に逸見エリカを描くことが多いですが、彼の描くエリカは妙に負の方向に精神が向いており、昨今のドラマCDやゲームで掘り下げられてきたエリカのイメージが全く反映されていないと感じているので、個人的には最もエリカを描いていながら、最もエリカというキャラの捉え方を間違っている方なのでは?と思います。