教皇選挙 ドルビーアトモス版を観ました ~確信を疑え、疑念を抱け~

公開前後にまさかの現実でも行われることになった、新たなローマ教皇を選出する投票式の選挙「コンクラーベ」を題材とした映画、「教皇選挙」。以前の公開中に気にはなりながらもいつの間にか上映が終わってしまっていたのですが、この度再上映が開始されたということで、梅田の方へ観に行って来ました。

こちらは梅田のスクリーン1番、プレミアムシアターTCXでの上映。でっかいスクリーンに加えてドルビーアトモス版、音響もバッチリの充実な視聴環境でした。来場特典として、裏面が作中で使われた投票用紙を模したものが貰えました。

色々と考えさせられる内容だった

ローマ法王が亡くなり使徒座空位(しとざくうい)となった為、カトリック教会の枢機卿達による投票で新たなローマ教皇を選出するコンクラーベが執り行われることに。主人公のトマス=ローレンス首席枢機卿が執り仕切るその選挙は混迷を極めていく・・・という内容。

題材が題材だけに、装飾を除けば登場する枢機卿の服装はほぼ同一、そして登場するのも壮年~年配のお方ばかりで、ぶっちゃけ名前と顔を一致させるのが大変だった。ローレンスもトマスという愛称で呼ばれたりするから余計に混乱した。

保守派と改革派の争いが主軸かと思いきや、その中でも策謀が渦巻く。同じ保守派ながら対立するトランブレとテデスコは野心や権力欲、偏った視点を隠そうとせず、執り仕切るローレンスもまた、コンクラーベで誤った人間が選ばれないように苦心しながら、自らも禁を犯すことになる。神に仕える者達ですら罪を犯し、ある者は苦しみ、ある者は嘘をつく。どの枢機卿も実に人間臭くて面白い。だからこそ自己へ問うことを止めるな、忘れるな。そう訴えかけているようだった。

政治とか多様性とかそっち方向に結びつけそうになる中身でもあるが、本質は多分そっちじゃないはず。執り仕切るローレンスすらも自らが口にしたように、枢機卿達は確信と疑念の狭間で自己を試されていた。確信と疑念、これが一番重要なことだったと思う。凝り固まった考え、後戻り出来ない選択や行動は本当にそれで良いのか、常に考え続けなければならない。

だからこそ枢機卿となる前から確信と疑念の狭間で悩み生き続け、最後まで野心を持たなかったベニテスが選ばれるのもまた、納得の行く結末だった。ローレンスを最初から支持していたのも、彼の抱える者を考えれば当然。

ローレンスが初めて自分の名を書いて投票した時に爆発が起きたのは偶然ではあるが、神の介入にも見えてくるから不思議。自らに課した責務を逸脱し、教皇になるという野心を持ってしまったことへの戒め、罰のようでもあったし、そしてテデスコ→ベニテスという説教の流れはあれが原因で起きた。あの瞬間にローレンスも脱落したんだなって。しかもあの時大聖堂でローレンスが倒れながらも見上げていた絵画は「最後の審判」。正に神が審判を決したかのようだ。

作中だとローレンスがコンクラーベの中で教皇にふさわしい人間だと自他ともに認めるような流れだけど、亡き教皇の為にという思いがあったローレンスにはそもそも最初から教皇になることが神に許されていなかったとも思えてくる。宗教的考えは詳しくないが、考えれば考えるほど面白い作品だと思いました。

あと、教皇様はこの作品ではマジモンの傑物だなぁ。序盤でチェスで八手先を読むと言われてたが、ローレンスが取り仕切ればこの結果になることまで読み切っていたとしか思えない。全てこの人の掌の上で起きていたことなんだろうなぁ。

これより投票を始めます。次期教皇にふさわしいと思う者の名を記入してください。

歴史アドベンチャー ローマ教皇とバチカン 2000年の謎 (TJMOOK)

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