発売以後、各所で大絶賛されており、5/7までのPSストアのセール対象にもなっている2019年発のヴァニラウェアが開発したPS4用ゲーム「十三機兵防衛圏」。
日本の企業が重機をそのまま4足歩行のロボットとして作りましたみたいな、ゴツゴツの巨人って感じのロボット「機兵」に少年少女たちが乗り込み、謎の侵略怪獣達へ立ち向かうという男のロマン溢れた設定の作品。
その怪獣との戦いまでの過程を描いた「追想編」、怪獣との戦いを描く「崩壊編」、追想編と崩壊編で得た情報等が整理され閲覧できる「究明編」の3つに分かれていて、ある程度は自由な順番でプレイヤーがそれらを攻略していけるようになっています。
うちの兄が12月に中古を購入していたのですが、体験版の範囲すら終わらないまま忘れ去られ、5月に突入。連休中の遊びとして、3日掛けてEDまでクリア。
EDが一つだけってこともあり、追想編を全部クリアして崩壊編で全部Sランクとミッション達成してアーカイブ全部閲覧できるようにしたらプラチナトロフィーもコンプ。崩壊編の難易度がプラチナに関係していないのは助かりました。
せっかくなので自分の感想を書きますが、何の予告もなくネタバレが出てくるので未プレイの方はくれぐれもご注意ください。
目次
追想編のグラフィックは個人的に100億兆満点
体験版の時点で私の琴線に触れまくったのが追想編のグラフィック。ヴァニラウェアが朧村正やドラゴンズクラウン等で表現してきたあのグラフィックで、1985年頃の日本の学校や町の様子を丁寧に表現しています。夕陽の差し込んだ教室、んほぉ~たまんねぇ~。
主要な子達や話しかけられる人々以外も、一発でモブと分かる表現をしながらもその場に確かにいるし、話し声は聞こえるし歩いてる、街に出れば車も通るしで、そこにいる人々がちゃんと生きてその場の光景を形成しています。
夕闇通り探検隊が心に刺さりまくった私としては、正に叶うならば見てみたいと願っていた、現代のグラフィックで夕闇通り探検隊をリメイクしたかのような雰囲気。徐々にシリアスな雰囲気にこそなりますが、それでも追想編がただ歩かせているだけでも楽しかったのは、このグラフィックが理由に他なりません。しかも夕闇と同じで、追想編の操作はキャラを左右に移動させる2Dの横スクロールですからね。
陽見橋?いや、違う、違うんだが・・・夕闇っぽさ極まってるなここ。 #十三機兵防衛圏 #PS4sharehttps://t.co/kzUbCBNtt9 pic.twitter.com/A5a9F9y1W4
— もみじ (@momiji_mypace) 2020年5月4日
特にここ、すみれ橋という橋の上。構図も相まって夕闇の陽見橋と一瞬錯覚しそうな程。もしも万が一、夕闇通り探検隊のフルリメイクがあり得るからヴァニラウェアにこのグラフィックでやってみて欲しいし、このグラフィックで100%アドベンチャーな学園物とかも作ってみて欲しいと思いました。
とにもかくにも、このグラフィックと雰囲気については自分的には文句のつけ所がありませんでした。
崩壊編は楽しみたいなら高難易度、さっさと進めたいならカジュアルで
追想編が怪獣との戦いまでの過程の話で、時系列で言えば最後となる怪獣との戦いを操作するのが崩壊編。シミュレーションゲーム形式で13人中から最大6人を選び、機兵に装備された武装で怪獣を倒していきます。
一応大まかに4種類に分かれていて、更に一機ごとに武装が異なり、搭乗する一人一人の持つスキルも異なるので能力的にはそれなりに差別化がなされています。勿論のこと、機体や武装の強化、武装の追加もあるし、回数制の全体スキルみたいなものもあったり、地上と空中の判定、アーマー属性とか、その手の必要な要素も最低限取り揃えています。
・・・ただ、自分としては追想編をさっさと進めたいので、低難易度のカジュアルでパパっと終わらせました。一度も危機に陥ることなく、バランスブレイカーなドローンを出しまくっていれば大抵なんとかしてくれるお手軽さ。最終戦など圧倒的な物量で襲い掛かって来るマップとかはそこそこ緊張感がありましたが、カジュアルは本当に簡単過ぎた印象があります。
はっきり言って、追想編に対してこちらの作り込みはイマイチかなと。せっかく作品の売りとして押し出している機兵が活かせていないんですよね。スパロボで言う戦闘アニメは無く、各武装を選んだ時にワイプでその武装のイメージ映像が出るだけ。
システム的には少し異なりますが、アニメーションOFFの戦闘しかないスパロボやファイアーエムブレムみたいなイメージが近いです。あと、いくら何でも、敵やミサイルが沢山画面に表示されたからと言って、PS4proで処理落ちするのは流石にどうかと思います。
ロボット物と思っていたら正直拍子抜けする作品だと思います。各々が追想編のラストに行う機兵の起動シーンはカッコいいんですが、正直、機兵を操作する崩壊編を遊んでも機兵がカッコいいと思うことはありません。あんまりそういう方向は期待する作品ではないです。機兵はどちらかと言えば舞台装置に近く、13人の少年少女たちと時間旅行をはじめとする謎がメインです。そもそも機兵という存在自体が・・・
それと追想編が全部終わってからいきなり30戦もSLGやらせるのは流石に不親切極まりないのでプロローグでは追想編と崩壊編を交互に差し込み、プロローグの後は片方だけ進めてもいずれもう片方を進めないともう片方が進められなくなる、という繰り返しになるのは仕方ないのですが、時系列を考えたら個人的にはこのSLGパート自体を無しにして、最後までADV形式にしても良かったのではないか、とも思います。追想編、つまりアドベンチャーだけやりたい人にとっては、後回しにしても結局やらなくてはならない崩壊編は存在そのものが億劫になってしまうわけです。
いっそ追想編のあのグラフィックであるならば、それこそヴァニラウェアがこれまで培ってきた横スクロールのノウハウが活かせるので、ゴエモンインパクトの前半戦ステージみたいな感じで作ることも出来たでしょうからね。まだ各々の背景や人間関係すらはっきり分かっていない中で戦場に出揃ってくるのに、後から見直すにはもう一度戦闘そのものをやり直さないといけない所は少し不親切でもあります。
・・・ただ、この崩壊編、機兵の強化や武装の追加等のゲーム的な要素自体も、しっかり作中で説明が付いているので、そこも含めて設定が一貫している点については割と評価したい所です。本当に細かい所まで、矛盾が無く説明されているゲームなので。
演出、盛り上げ方自体は◎
ただ、こちらもこちらで特にBGMによる演出や盛り上げ方はとても良いです。ボス戦のBGM、とある戦闘で流れる歌、段階を経るごとに変調する最終戦の曲など、緊張感を高め盛り上げてくれる名曲が揃っていると思います。そして少年少女がロボットに乗り込んで戦うというシチュエーション自体に燃える人ならば楽しめるのは間違いないでしょう。
また崩壊編を進めれば進める程、必然的に追想編も進んでいくようになるので、最初はどういう理由で世界の危機に立ち向かっているのか全く分からず、後半に進むにつれその意味が分かって来ます。プレイヤー目線では何も分からないまま戦いが始まり、その意味する所が徐々に開示されていき、ほぼすべての情報が開示された上で最後の戦いが解禁される。
負けられない戦いだということをプレイヤーに納得させながら戦いが進んでいく為、進めれば進める程、13人に感情移入できる人には崩壊編はそのシチュエーションがどんどん楽しくなっていくと思います。そして始まる最後の戦い、圧倒的な物量に対抗する耐久戦。ここまでに彼らに深い愛着が沸いている人なら、何がなんでも生き残りたい、彼らを生き残らせたいと思うことでしょう。
気になる「引き」が続き、一本道だが過程の感想は十人十色
先述したように、このゲームはADVの「追想編」、SLGの「崩壊編」、アーカイブの「究明編」の3つになっていますが、内容的には追想編と崩壊編がメイン。プロローグが終わった段階で、崩壊編の続きをやるか、それまでに解禁された主人公達の誰かを選んで追想編を進めるかは完全にプレイヤーの自由に委ねられます。
他の主人公をある程度進めないと他の主人公が解禁されなかったり、他の主人公のシナリオや崩壊編を進めないと進行が止まってしまうのはチュンソフトの「街」や「428」にも近いシステムですが、あれらと異なるのは主人公となる人物が13人もいて、その背景や生まれた時代に加え、それぞれのストーリーの開始時間すらバラバラであること。そしてこの13人はお互いのストーリーで大小様々に関わっています。
当然13人もいて立場も時間軸も変わるわけですから、その関係も異なるし動きも違う為、その主人公自身の目線で見たら納得のいく行動であっても、他の主人公から見たらこいつは一体何をしているんだ?というシーンや、他の主人公のストーリーで別の主人公の背景が分かることも多いです。
そしてプロローグの範囲だけで分かるのは、「時代を超えて少年少女が一つの時代に集い、機兵に乗って地球の危機に立ち向かう」というものですが、そこから何度も何度も少しずつ謎が分かるにつれて、「ははーんつまりそういうことか」と一旦はプレイヤーは思うわけですが、少し進むと「実はそうじゃないんだよ」という予想を覆す事実や謎が更に掲示され、プレイヤーを更に惑わせ悩ませ、混乱させる展開がずーーーっと続きます。
1つ謎が分かったら3つ謎が増えるレベルで増えていきながらも、異なる時代・時間旅行・未来の自分・怪獣・等の様々な謎は少しずつ開示されていき、ある程度の謎が解けてくると次第に全貌が見えてくるようになりますが、その全貌自体が根底から引っくり返される、ということも。
そこに先述した、どういう順番で13人のシナリオを進めていくかが自由な部分も合わさり、最終的には収束するものの、遊んだ人それぞれに過程における感想と謎や伏線の回収の順番が丸っきり異なるものになるという大きな特徴があります。
他の主人公に襲い掛かる薬師寺恵、東雲諒子の目線で見る他の主人公などは正にその典型で、プレイヤーの選ぶ順番によって個々の人物へ抱く印象も丸ごと変わってきます。
プレイヤーの予想を上回り続けようとした結果のオチが話を大きくし過ぎていてSFとして評価出来るかはともかくとして、続きが気になる引き方が最後まで続き、しかもその過程が人によって異なるという点がこのゲームの最大の魅力、評価点となるのではないでしょうか。自分だけのストーリーを楽しみたい人にとっては打ってつけのゲームです。
そしてクリアした後、追究編に追加される「無限の可能性」。全貌を理解した上であれば、この内容とタイトル名が何を意味するのかにハッとさせられることでしょう。
過程を楽しむアドベンチャーとしては優良なゲームである
つまり私の出した結論としては、十三機兵防衛圏は「クリアまでの過程」に重きを全力で置いているゲーム。なので、「アドベンチャーゲームに期待するものがクリアまでの過程が楽しめること」であれば、これ以上なく面白いゲームだと思います。
私個人としては、見たことのあるSF要素や謎の全貌、崩壊編については正直評価は高くありませんが、追想編のグラフィックがどストライクで、過程もノンストップで楽しみ続けられたのは事実なので、終わってみれば一本のゲームとしてはプレイして損の無かった作品であることは確かです。
一方で、過程はともかくとして分岐と言える分岐がゼロの一本道でありプレイヤーには結末を変えることが出来ない点や、崩壊編の難易度や作り込み等、ゲーム全体を通した評価で見ると過大評価では無いかと言う意見も納得の出来るものだと思います。
また、追想編も私個人としてはグラフィックだけで評価に値しますが、崩壊編がその存在含めて評価出来るか否か、13人の主人公についてどう思えるか、ストーリーをそもそも評価出来るか、SFとして大きくし過ぎている真相、あまりに情報を詰め込んでいる割に描写が少ない部分も多かったりするのでイマイチ把握しきれず納得できない所など、加点と減点で総合的な評価を下したりしようとすると、途端に評価が難しいゲームになります。
それに加え、SF的な一つ一つの謎やびっくりする要素も、どこかで見たことがあるようなものが多い為、造詣が深いほど驚かされないという厄介な面があります。例えば当人以外にはとある人物が見えていないという展開も、私は別の作品で既に見たことがあった為、いくつかの伏線がそれを示していたこともあり、そこまで深い衝撃はありませんでした。
それこそ、キャラもストーリーもグラフィックも崩壊編も全部刺さる人にはとことん刺さる超絶的な神ゲーとなりますが、刺さるものが少なければ世間で言われる程でもないイマイチなゲームでもある、という強烈な二面性を持っていて、更に過程への比重が他のゲームよりもとんでもなく高い為、一切のネタバレを遮断した状態で遊ぶことでしか評価出来ないゲームなのではないか、と思いました。
ともかく、ゲームなんだから自分で遊べ、それが大事だというゲームの基本に則るべきゲームであり、プレイ動画を見てしまったらその過程を楽しむ権利を失ってしまう為、とにかく本当に自分で遊べとしか言えません。それによって、この少年少女たちのロボットSF物語が自分にとって神ゲーなのかが分かることでしょう。
コメント
自分も同じ感想を持ちました。
面白かったのですが、微妙でした。
タワーディフェンスがメインかと思ったら
428や街系の1本道アドベンチャー? といった印象で
純粋なアドベンチャーでも良かったのでは?と感じた。
肝心のプロットも、解いている過程は面白いが
オチが分かってしまえば、がっかりする系で
シナリオが良いとは・・
でも、グラフィックや見せ方や音楽が素晴らしく
6000円で購入できたが、自分にはその価値はあったので
本当に、この評とおり。
コメントありがとうございます。
絶賛する声ばかり聞こえてからのプレイで自分は首を傾げた部分もあったので、
賛も否も含めて評価した感想を書きましたが、同じように感じている人もいると分かりホッとしました。